向日葵の夜は時々後ろ向く    今泉 而云

向日葵の夜は時々後ろ向く    今泉 而云

『この一句』

 「夜の向日葵」を詠んだ句は、先にこの欄で(可)氏が取り上げた「ざわざわと夜の向日葵動き出す 嵐田双歩」の評が面白い。戦国の軍勢が動き出すさまを連想している。そのなかで述べているように、おのずから太陽の軌道と一体ととらえられる向日葵に対して、舞台を真昼に設定せずあえて夜にしたのが斬新ということだろう。ちなみに全部の向日葵が日中つねに太陽を向いていると思いがちだが、実際はそうでなく生長期の時期だけ太陽を追う。完全に開いた花は東を向いたままほとんど動かないという(ウイキペディア)。
 さて夜の向日葵の生態である。筆者の記憶をたどると、夕方にはまるで顔をうつむけたように花はうなだれるという印象をもつ。伸び盛りの向日葵は夜に西を向いて頭を垂れる。この句が詠みあげた光景は、向日葵の花が後ろを向いて垂れているよと言っているのである。とうぜんありうる光景だ。風かなにかの具合で後ろ向きに花が倒れることもあろう。向日葵にもつむじ曲がりがいてオレはなにがなんでも後を向くんだというのもいるだろう。「時々後ろ向く」という措辞がなんとも言えない詩情をかもしだしている句だと感じ入った。「時々」がにくい表現であり、さらに夜という設定がなおのことそう思わせる。
(葉 21.07.18.)

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