梅漬ける八十四年の皺深し 大澤 水牛
『合評会から』(日経俳句会合同句会)
実千代 なんともいえない沢山の思いが梅を通して伝わります。
三代 生きてきた年月をしみじみと感じさせる句。梅と皺が響いています。
操 梅干にせよ、梅酒にせよ根のいる作業。手のひらの皺に歳月を感じる。
弥生 この句の素晴らしさは「八十四年の皺」という措辞の巧みさ。梅を漬けている人物、梅漬けの知恵や味、等々へ読み手の想像をかきたてます。
水兔 梅漬けはコロナ禍でも失なわれない楽しみの一つですね。手の皺は、仕事をし続けた勲章です。
十三妹 う〜む!!とうなりました。しわしわの手に、献点。
てる夫 眉間に皺なぞ見せたことがない精力的な活動をこの先もずーっと続けられますように。
冷峰 年季の入った姿が目に浮かびます。御長命に乾杯!
三薬 老人の皺と梅干の皺を連想させるテクは、八十翁先輩にしては月並だったかとも思うが、毎年梅と戦うその気力体力を称賛するべきだ。
ゆり 作者と思われる方の梅干は、絶品です。思い浮かべるだけで、口の奥がキュンとします。
反平 水牛さんの梅干、うまかった!
* * *
八十半ばの作者は今年、十一キログラムもの梅を梅干や梅酒に仕込んだという。梅仕事は結構面倒だ。きれいに洗って、乾かして、一個ずつヘタを取って……。歳を取ると、何かと億劫になってやる気が起きなくなりがちだが、作者は違う。これを毎年やっている。しかもその原動力は「人にあげて喜ぶ顔が見たい」からだというから驚く。句会のメンバーにも作者の〝作品〟をもらった人は多いようで、かなりの選者が作者が誰か分かった上で採ったと思われる。ともあれ、座の文芸の面目躍如、句会では圧倒的な人気を集めた。
(双 21.07.01.)
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