我一人なり六月の書道展 今泉 而云
『季のことば』
一年十二月、どの月もすべて季語だが、どの月も句を作るのは難しい。六月は特にそう思う。
「六月」を兼題にした水牛さんは六月生まれ。「六月という月はまことに冴えない月である」と嘆く。なんでも、一年で祭日のない唯一の月で、とりたてて特徴のない月だから、らしい。ご自身は「取柄無き六月もわが生まれ月」と自嘲気味に投句した。この句の作者・而云さんは、同じ丑年生まれ。水牛さんと二人でこの「双牛舎」を立ち上げた。七月生まれの作者なら「わが生まれ月」をどう詠むだろうか。
閑話休題、掲句は知り合いの書道展だろうか、それとも王羲之や顔真卿などの古典の臨書の類だろうか。非常事態宣言で閉館を強いられていた美術館や映画館、劇場などは宣言延長に伴い条件が緩和され、六月から再開した施設が多い。この書道展の会場はどういう施設か不明だが、開催できたようだ。この時期、仲間を誘って、というわけにもいかず、一人で訪れたものの展示会場は閑散としていた。梅雨の季節でもあり、雨の影響もあったかもしれない。「我一人なり」の上七にさまざまな詠嘆が込められている。正に令和三年六月の、とある街角の一断面である。
(双 21.06.25.)
この記事へのコメント
鈴木雀九
6月は良い月です。水兎さんに涼暮月と教わった。夏椿咲く月と知って一挙に好きになった。6月24日、日曜日、「イサム・ノグチ発見の道」に上野の東京都美術館へ妻と行った。2人ともコロナワクチン済である。見終わって同じ建物内の書道展に入る。私の好きなタダです。
大量の書道作品をめぐり、ある区画に入ると大きな漢字のタタミ3畳ほどの作品の前で全くちょうど、「表彰状・・、よって文部科学大臣賞を授ける」と読み上げているところでした。受賞者は半袖白ブラウスの制服県立女子高生(後で作品に近寄ってわかった)で、小柄でどちらかといえば素朴、嬉しさと恥ずかしさの笑みのこの生徒の内に秘めたエネルギーを思いました。居合わせた10人ほどの拍手に私も飛び入りで大拍手しました。
長く書いてすみませんが、この美術館の正面柵前の大きなイスノキとその葉の虫こぶは一見の価値ありです。
鈴木雀九