新しきビルの緑道夏至の雨 星川 水兎
『季のことば』
近ごろ建てられる高層ビルは、都市計画などで空間地を設けることが定められているのだろう、緑道や小公園などが併設されるようになった。逆に、そうした空地を設ければ高いビルが作れる規則になっているので、土一升金一升の土地にこういう空間が生まれるようになったのだという話も聞いた。
法律的なことはさておき、とにかくこれでコンクリートの無様な箱がびっしり並ぶ東京都心部に、せせこましいものではあるが樹木や草花の生えた「地面」が出来た。ビル街散歩もこれでずいぶんほっとした気分が醸し出される。
ところで季語の「夏至の雨」。本来、夏至は一年で昼の時間が最も長い一日なのだが、東海道ベルトラインは梅雨の最中。大概は雨降りかどんよりした厚い雲に覆われている。
昨日6月21日が夏至で、東京近辺は雨こそ降らなかったが、晴時々曇のむしむしと暑苦しい典型的な梅雨の晴れ間だった。しかし、こうして新しく植栽された木々が雨期に活気づき、葉を光らす景色はなかなかのものだ。晴雨兼用のカラフルな傘をさしてオフイスに通う通勤女子の足取りも軽い。この句からはそんな気持の良さが伝わってくる。
(水 21.06.22.)
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