月を喰む地球の影の遠さかな   池内 的中

月を喰む地球の影の遠さかな   池内 的中

『合評会から』(番長喜楽会)

満智 月食を「月を喰む」と表現しているのがうまいなあと思いました。
二堂 東京では見えませんでしたが、米国ではよく見えたそうです。月と地球の距離を確かに感じますね。
命水 かつては、地球外の世界に夢を持ったものです。しかし、家族ができ、孫達に囲まれていると、この地球こそかけがえのない世界だとつくづく思えます。
百子 時事句ですね。うまいです!
*       *       *
 去る五月二十六日のスーパームーンの皆既月食を詠んだ句である。この句の中にある季語らしき言葉は「月」だが、秋の季語だから六月の句会には相応しくない。番町喜楽会は有季定型を旨としている句会なので、無季の句にお目にかかることはほとんどない。筆者はこの句は時事句でもあり、無季でもまったく問題なしとして一票を投じた。
最初、作者は「地球の影の暗さかな」と詠んだが、凡庸で説明的だと考え、「遠さかな」に変えたという。それが正解だったと思う。「遠さかな」によって、この句は無季ではあっても豊かな詩になったと思う。作者はこの日、高得点句を連発した。メール句会であるため、句友の喝采が聞けなかったのは残念である。
(可 21.06.08.)

この記事へのコメント

  • 迷哲

    確かに「月を蝕む」は秀逸な表現ですね。
    埼玉は雲がかかって良く見えませんでした。切れ間から覗いた印象では、「速さかな」もいいかなと思いました。
    2021年06月09日 11:06
  • 酒呑洞

    私も「地球の影の速さかな」がいいなあと思っていました。実は老眼のせいもあって、選句表が送られて来た時、最初は「速さ」と読み取ってしまい、「いいなあ」と感服したのでした。ただ、「有季定型」を遵法している身としては残念ながら採れませんでした。しかし、「月を喰む地球」とは実に素晴らしい。無季の句でも、これだけで季語以上の働きをしているように感じます。
    2021年06月09日 15:17