骨折の足伸ばす先緑さす     山口 斗詩子

骨折の足伸ばす先緑さす     山口 斗詩子

『合評会から』(番町喜楽会)
 
可升 骨折して身動きがとれず、縁側で足を伸ばしてみると、いつの間にか庭がすっかり新緑に包まれていることに気付く。楚々と詠まれた良い句だと思います。
満智 縁側でしょうか。骨折した足と緑の組み合わせが新鮮。骨折してしまって大変だけれど新緑を味わっている感性が素敵です。
水兎 骨折ですか!お気の毒です。緑が美しくても、歩けない無念さが忍ばれますが、ステイホームの実践と思って。
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 独り暮らしの作者は最近骨折したという。老境で足を折って不自由な生活には同情するほかない。他人事ではなく骨密度の低くなった我々老人は転んだら大てい骨を折る。ことに骨盤と足が怖い。寝たきりになってしまえば文字通り寿命が縮まる。同情のあまり老齢者の句会で高点を取ったのは当然だ。
ところが足を折ったのに、この句には暗さがない。ひとえに「緑さす」と結んだせいで、むしろ前向きな気持ちが出ている。松葉杖にすがりながらコロナ禍の生活をしのいでいるのだろう。ペタンと足を投げ出す先には新緑があり、明るさが見える。逆境を乗り越える気持ちがこめられたこの句に声援の一票を入れた。(葉 21.05.25.)

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