焼くだけの男の料理風薫る 廣田 可升
『合評会から』(番町喜楽会)
水牛 本当の料理好きの男の料理は、とてもこんなもんじゃない、もっとちゃんとしたものなのですが、「風薫る」という初夏の気分の良い季語と合わさって、良い句になりました。
青水 季語を信じ切って、設定を言い切っているところが良い。特に上五が良い。
春陽子 大学のゼミで渓谷のバーベキューが恒例行事だった。金串にさし焚火で焼くだけの料理だが、その時の味は今でも記憶に。風薫るの季語もぴったりと思います。
水兎 バーベキューまたは、お休みの日の手料理でしょうか。美味しそうですね。
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「男の料理」なる言葉が出てきたのは昭和40年代後半ではないかと思う。檀一雄が産経新聞に連載していた「檀流クッキング」をまとめた本が昭和45年に刊行され、人気を集めた。その後、小学館から「男の料理」と題したムック版の料理本が出たので、ともに買った記憶がある。これらの本を見て、カツオの叩きや豚骨にチャレンジしたが、どの料理も素材にこだわり手間を惜しまずに作るレシピだった。
作者によれば、子や孫が集まった時のバーベキューを詠んだものだという。本来の「男の料理」とは違うが、目くじらを立てる話でもない。むしろ妻の家事を積極的に助け、家族に喜ばれる令和の「男の料理」があってもいい。和気藹々のバーベキューを風が爽やかに吹き渡って行く。
(迷 21.05.21.)
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