春眠のパソコン画面謎の文字   谷川 水馬

春眠のパソコン画面謎の文字   谷川 水馬

『この一句』

 一読して思わずニヤリとし、「ある、ある」と自らの体験を思い出して一票を入れた。パソコン作業をしていて睡魔に襲われると、一時意識が飛び、キーボードに置かれた指がキーを押し続けることがある。ハッと目覚めて画面を見れば、そこにはアルファベットや記号の意味不明な羅列が並んでいる。数秒で目覚めればいいが、寝落ち時間が長いと、謎の文字は数ページに渡って延々と続くことになる。掲句はそんな春の日の出来事をユーモアたっぷりに詠み、長閑な気持ちにしてくれる。
日本で売られているパソコンのキーボードは、アルファベットと仮名が併記されたJISの日本語配列が大半だ。アルファベットも仮名も配列に規則性はなく、むしろ打ちづらい並びとさえいえる。タイプライター時代からの歴史的経緯があって、この不便な配列になったらしい。使用頻度などをもとに、富士通の親指シフトなど、より入力しやすい配列も考案されたが定着していない。
 作者は文章を扱う仕事柄、パソコンには熟達している。キーボードもワープロ時代から様々なタイプを使いこなしているに違いない。その作者も眠気だけは如何ともしがたい。ましてコロナで在宅勤務が続いている今日この頃である。会社とは違いリラックスして画面に向かっている時に、春眠が兆す。画面に謎の文字が浮かぶのも、むべなるかなである。
(迷 21.04.25.)

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