新しき靴おろす朝草若葉 中嶋 阿猿
『この一句』
通学あるいは出勤前の情景と受け取ることもできるが、「草若葉」という季語を置いたところからすると、これは早朝のジョギングに出で立つところではなかろうか。下ろしたてのスニーカーを履いて「いざ」という気分である。きつすぎず緩すぎず、靴紐をしっかり締めて、立ち上がり、足踏みしめてみる。そして、颯爽と草若葉の道を走り出す。早春のちょっと肌寒い空気が殊の外心地良い。
ウオーキングでもジョギングでも、履き慣れた靴はなかなか捨てられない。しかし、毎日酷使しているのだから、しばらくたてば当然すり減って来る。極端に踵の減ったジョギングシューズを履き続けるのは運動中のバランスを崩したりして身体に良くないと言われる。それでも履き慣れたシューズは心地よく、なかなか捨てられない。それをある日、新品に取り替えたのだ。
別に大したことではないのだが、当人にとっては「変えたぞ」ということで、気分一新の趣を実感する機会になる。そうした気持がよく表れた佳句である。「草若葉」の季語がまさにぴったりである。
(水 21.04.20.)
この記事へのコメント