一行を行きつもどりつ春眠し   池内 的中

一行を行きつもどりつ春眠し   池内 的中

『合評会から』

命水 春は良い季節ですね。読書に没頭しているとどこまで読んだか分からなくなることがあります。
水牛 コロナ籠もりを奇貨として、読書に身を入れようと、ちょっと堅苦しい内容なので積んで置いたままの本を紐解いた。ところがやはり選んだ本が良くなかったか眠気を催し、いつまでたっても進まない。とても面白い。
*       *       *
 春の眠さはいかんともしがたい。生理学的には明快に説明できる現象なのだろう。専門家の説明によると、春は睡眠中の副交感神経が朝になっても活発な交感神経に切り替わりにくいからだという。「春眠暁を覚えず」はこの間の事情を詩に詠んで日本人にあまねく親しまれている。掲句は朝の眠たさを詠んだものではない。「春眠」の季語の本意は寝起きに限らず春の二六時中の眠気をいう。日中、春の眠気の中で本を読むとちっとも前に進まないことがある。心ここにあらずというわけではないが、読書に集中しようと思っても眠気が邪魔する。同じ行から先に進めず目が右往左往。みんなよくある体験を上手に詠めば、合評会評はおのずと異口同音にならざるを得ない。
(葉 21.04.15.)

この記事へのコメント