中腰の介護の日々に春浅し 大沢 反平
『合評会から』(日経俳句会)
弥生 「中腰」のひと言が介護の大変さをシンボリックに伝える一句。そんな毎日に春はまだ、という気持ちを季語が受け止めています。ただ、中七の「介護の日々に」の助詞が散文的かなと思いました。
而云 介護の定めか。「親切な介護ロボット春浅し」。こんな日が早く来れば、と思います。
睦子 介護が長いのでしょうね、腰痛に気をつけてください!
* * *
我が家の近所にはデイケアサービスの施設が多く、介護士の甲斐甲斐しく世話する情景をよく見る。よくやるなあ、えらいもんだなあといつも感心する。介護は「中腰の」姿勢を取ることが多いようだ。この言葉を据えたことによって、この句は実体感を備え、まだ寒い「春浅し」の季語とも相俟って秀句となった。
メール句会で送られて来た選句表でこの句を見て真っ先に選んだのだが、後で作者の「脚悪の家内を抱き上げたりすることが多くなり、小生もそのためか背骨の中央部分の軟骨が減って、背中やわき腹が痛む不愉快な日々を送っています」との自句自解を読み、ますます身につまされる思いを抱いた。この句会も老老介護の句がどんどん増えて行きそうだなあと思った。
(水 21.03.26.)
この記事へのコメント