裸木のてっぺんに鳥動かざる 岩田 三代
『この一句』
寒中、庭木を目がけて飛来する野鳥の姿が目立つ。ある朝、オナガの群れが舞い込んできた。10羽ほどバラバラに飛び回り、そそくさと飛び去った。体長37㎝、長い尾羽、水色の鮮やかな姿に見とれた。一年を通して見かけるのはヒヨドリ、いつもつがいで行動する。単独で餌を探していても必ず近くに連れがいる。軒先近くまで来るほど厚かましく、飛び立つときも騒がしい。
掲句の「裸木の鳥」はこの季節、よく見かけるシーン。高所に止まって急降下、地上の虫を捕食するモズであろうか。体中の羽毛を膨らませ身じろぎもせず、枝に止まっている。地上に動くものが居る季節ではないので、何を狙っているのか。幹に潜む虫を探す風でもない。ひたすら寒風に耐えている。しばらく目を離しているうちにどこかへ飛んで行った。巣のある林に戻ったのだろうか。
「動かざる」という措辞に余韻を感じる。しかし作者がどんな思いを込めたか。それが何であるか、俄かにイメージ出来ない。ふと修行中の学僧の姿が浮かんだ。風雨にさらされながら、姿勢を正して読経を続ける。はてさて野鳥に意思があるだろうか。
(て 21.02.17.)
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