エクセルのふつりと消えり鎌鼬  徳永 木葉

エクセルのふつりと消えり鎌鼬  徳永 木葉

『合評会から』(日経俳句会)

三薬 理由を告げぬまま、突然データなどを消してしまうパソコン様。いきなりバッサリという鎌鼬そのものではないか。上手い例えに気が付いた殊勲甲。
青水 むつかしい季語とパソコンの表計算ソフトの取り合わせ。しかも季語ではなくソフトを消してしまう手際の良さ。ウマい。
水牛 パソコンは訳が分からないうちに突然消えたりします。コンチクショウと怒鳴ってもどうにもなりません。まさに鎌鼬の仕業です。
弥生 わけのわからぬトラブルの元は、当世でも鎌鼬。先進の技術との取り合わせが興味深い。
水兎 パソコン画面がフリーズすると、本当に絶望的な気分になりますね。物の怪の仕業に違いありません。
百子 取り合わせの句として面白いですね。確かにパソコンの画面がふうっと消えるのは何か神がかっています。
          *       *       *
これは「現代社会の最先端を切り取った秀句」といっても過言ではあるまい。選評にあるように、かなりの人間が経験しているパソコンのトラブル。その困惑ぶりを「鎌鼬」という今は忘れられたような面妖な事柄に結び付け、うなずかせた手腕は見事。
(光 21.02.11.)

この記事へのコメント

  • 酒呑洞

    誰もが呆然としたり、慌てたり、悔しがったりしたことのある経験。それをさっと掬い上げた腕前に感服しました。「消えり」が少々窮屈な言い方でしたが、字数合わせでしょうがなかったのかな。「消ゆ」という下二段動詞に「り」は直接は接続せず、「消えたり」が普通だと思います(と、また横丁のうるさい隠居の難クセ)。
    2021年02月11日 13:38