大雪の中を落ちゆくエレベーター  星川水兎

大雪の中を落ちゆくエレベーター  星川水兎

『合評会から』(日経俳句会)
        
早苗 ガラス張りのエレベーターから外の雪を眺めているのでしょうか。「落ちゆく」という表現から、エレベーターが雪のスピードを追い越して降下する光景が目に浮かびました。
阿猿 最近のオフィスビルにはガラス張りのエレベーターがけっこうある。ガラスの箱に入れられて激しく降る雪の中に放りだされたような不思議な感覚を詠んだものか。空間の切り取り方が大胆。
而云 外の様子が見える透明のエレベーターだろう。「落ちゆく」が巧みだ。
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 この句を前に迷うところがあった。作者の位置である。エレベーターに乗っていて落ちてゆくのか、それとも外にいて見ているのか、と…。もし前者で、ショッピングセンターなどの最上階から一階へ急降下というような場合なら、奈落の底に落ちるような、ちょっと怖い感じもする。一方、スキー場など離れた所からホテルのエレベーターを見ているような場合なら、恐怖感は他人事、降り頻る雪の中に佇む現代的、かつ幻想的な風景ということになる。さて、どっちだったのか。
(光 21.02.04.)

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