御降の白く舞ふ里家五軒     中村 迷哲

御降の白く舞ふ里家五軒     中村 迷哲

『合評会から』(日経俳句会)

方円 絵になりますね。暮らしは大変でしょうが、情景はとても美しい。
三代 景が浮かびます。白が穢れなき年の初めを強調し、家五軒の静けさと響き合っている。
双歩 たった五軒だけになった過疎地の正月。折から雪が降ってきた。舞台装置が幻想的で、悄然とした景色が浮かぶ。
       *       *       * 
 「御降」は正月に降る雨、もしくは雪のこと。「家五軒」は正確に五軒というよりも、それほどの過疎という意味合いだと思うが、具体的にはどこなのだろう。この句を選んだ人はそれぞれが、自分の経験や記憶にある映像を辿って、雪が舞う静かで美しい集落を思い浮かべたようだ。
 筆者は何となく飛騨の白川郷をイメージした。合掌造りの集落に、暮れからずっと降り続けている雪が元日の今日も舞っている、というような景だ。ただ、白川郷は百軒ほどの大きな村だ。あるいは、NHKの「ゆく年くる年」のロケ地の一シーンだろうか。いずれにしても、雪がすべてを浄化してくれるような、「御降」に相応しい舞台である。
(双 21.02.02.)

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