福詣終えて見上げるタワーに灯  岩田 三代

福詣終えて見上げるタワーに灯  岩田 三代

『この一句』

 亀戸七福神吟行の最高点句である。したがって、この「タワー」は「東京タワー」ではなく、「スカイツリー」である。吟行句のありがたさで、誰もこのタワーを東京タワーのことだと読み違える人はいない。よくよく考えればスカイツリーも間違いなくタワーである。
 この句は、その「タワーに灯」という表現がなんともいえぬ詩情を感じさせてくれる。吟行を終えてホッとしたのか、あるいはああ疲れたなあと思ったのか、いずれにしても作者はタワーの灯に間違いなく癒されたのだろう。俳句という短詩のなせるところ、それ以上の感懐は読者の想像にゆだねられる。
 筆者はこの句を読んで、先のオリンピックの頃に流行った「東京の灯よいつまでも」という歌謡曲を思い出した。すなわち「タワーの灯」が、「東京の灯」にかぶるのである。大阪の鼻垂れ坊主だった筆者は、この歌を聴いて、いつか一度は東京に行ってみたいものだと憧れていた。まさか、こんなに長く関東に暮らすとは夢にも思わなかった。
 建てているときには、正直言って「今更、こんなもんいるのか?」と思っていたが、今となってはスカイツリーのない墨東の景色はない、と思うほど馴染みある光景になってしまった。見上げるたびに「思えば遠くに来たもんだ」と思ってしまう。
(可 21.01.28.)

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