寒空に薄着の坐像阿弥陀佛    田中 白山

寒空に薄着の坐像阿弥陀佛    田中 白山

『この一句』

 正月恒例・七福神詣の最初は寿老人を祀る常光寺。しかしこの句の作者は七福神より先に、本堂左側の露座の阿弥陀如来を見つめた。薄い衣をまとった座像はいかにも寒そうであった。しかもこの時期、参拝客は少なく、仏像に目を向けてくれる人さえ少ない。作者は阿弥陀様に心の中で「我慢の季節ですね」と声を掛けたのだ。
 仏像はおおよそインドの方面の生まれだから、基本的に薄着である。両肩をむき出しにし、薄物をさらりと着流したようなスタイルが多い。本来の御在地は西方浄土なのだが、アジアの東端にまで来られ、衆生を救って下さる。日本人にお馴染みの存在になっても薄着主義は変わらず、参拝する人々にやさしい眼差しを向けておられるのだ。
 作者は七福神吟行の常連である。これまで恵比寿、大黒、弁財天などの本命ばかりを詠んできたので「今回は発想を転換、他の仏様、神様なども・・・」と視点を変えてみたそうだ。コロナ禍もあって吟行を欠場した私(筆者)は「なるほど、そういう句材もあったか」と大いに感心した。「来年は七福神吟行へ」と心のネジを巻き替えている。
(恂 21.01.21.)

この記事へのコメント