シベリアといふ菓子食めば冬三日月 嵐田双歩

シベリアといふ菓子食めば冬三日月 嵐田双歩

『この一句』

 シベリアという名のカステラもどきの菓子がある。昔から人気で今も全国の菓子屋で作り続けられている。愛好者が少なからずいるようだ。さしずめ作者はその一人に違いない。シベリアは羊羹や餡子をカステラようのもので挟んでサンドイッチ菓子にしたものだ。名前の由来は諸説あり、羊羹・餡子をシベリア凍土に見立てた、日露戦争当時に考案されたから、あるいは断面がシベリア鉄道の線路を表すからなどがあり定説はないという。
 作者はいま俳句会への投句をあれこれ考えながら、シベリア菓子を食べている。「いいね、この小道具」とでも思ったのか。それにしても、地名でありながら「シベリア」という言葉には抜きがたいイメージがある。じつにユニークな菓子が俳句になった。「冬三日月」の措辞と重なって、シベリア抑留日本兵の幾万の憤死が脳裏に浮かんで来た。凍てつくツンドラの地の過酷さを甘い菓子の味わいで包みながら、塩辛い冬の句に仕立てたと思う。シベリアに代わる厳冬を表すにふさわしい菓子はないかとちょっと考えてみたが、思いつかない。手練れの一句としていただいた。
(葉 21.01.06.)

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