回転にひねりを入れて柿落葉 玉田春陽子
『季のことば』
柿の葉は意外に大きなものだ。手のひらサイズが普通で、柿の種類によっては草鞋大のものもある。散る時期になった葉の色と模様が素晴らしい。手に取るとまるで錦のような模様に見える。葉の形状は平らのようで複雑である。全体的に裏から表へと僅かに反り返っているが、それぞれに特定の凹凸があって一様ではない。
そんな葉がふと枝を離れる。風のない時はまさに「ひらひら」だが、曲面の形状によって、その葉なりの動きがあるようだ。地面に近くなると僅かな空気にも乱れがおこるのだろうか。一瞬、それまでと違う動きを見せて着地する。句はそれを「回転にひねりを入れて」と表現した。「上手く詠むもんだなぁ」と感心する。
まず思い浮かぶのが、体操競技の最後の着地だろう。選手の体がゴム毬のように弾み、くるくると回りながら、ひねりを入れたりして着地する。柿の落葉は空気圧と僅かな風に身を任せ、一葉がどの一葉とも違う動きをするのだ。直木賞作家・山本文緒さんの近作「自転しながら公転する」のタイトルそのものでもある。
(恂 20.12.29.)
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