従わぬ者みな斬ると冷まじき   杉山 三薬

従わぬ者みな斬ると冷まじき   杉山 三薬

『この一句』(日経俳句会)

 長期政権記録の安倍政権を継いだ菅義偉氏には「強権」のイメージがある。官房長官として中央省庁各部をまとめ、引っ張った実行力。政権の方針に異議をとなえる官僚に遠慮しないといった強面の側面。首相になってすぐに表面化した日本学術会議の委員人事問題の対応には「剛腕」というより「強権」の印象を受ける。掲句は「冷まじき新首相」を詠んだ時事句である。
 水牛歳時記の「冷まじ」には、「物凄い」「見るも無残」といった現代風の詠み方も盛っている。しかしこの句会で「すさまじや首領になる人かつぐ人」(光迷)、「すさまじや首相官邸鉄の壁」(てる夫)、「冷まじやコロナ軽視の大統領」(百子)といった時事句には点が入らなかった。「冷まじき」新首相の句には二点入ったが、「それ以上」にならなかった。時事句だったからだろうか。
 時事句と川柳の違いを考える。川柳は時流を鋭く風刺する。俳句は人の心や自然の営みから受ける感慨を物に託して詠み、そこから時流に対する作者の心の動きをほのかに示す。ここが真っ正面から時流を斬る川柳との違いであろう。しかし掲句が時事句であって詩情のかけらもないと言って排除するのは当たらない。
 個人的には、時の流れや、生きとし生けるものを題材に句作するのを好む。それが結果的に川柳に近いものになったとしても構わない。それは即ち自分の生きてきた世界の記録であり、残しておきたいと思うからである。
(て 20.11.10.)

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