吹き出しのような夏雲何を問う  斉藤 早苗

吹き出しのような夏雲何を問う  斉藤 早苗

『この一句』

 九月半ばの句会に投句されたもので、「いかに何でも夏雲は困るなあ」と採らなかった。年に一度しか開かれない句会なら四季を問わずに詠めるが、月次句会では「当季」即ちその時季に合わせた句を出すのが暗黙の約束になっている。
 しかし、月報が出来上がったのを読み直すと、とても面白い句だなと思う。型に囚われず、大空を見上げて直感的に感じたままを詠んでいるところが新鮮である。
 それに令和二年は春夏秋冬が入り混じるような天候不順で、投句締切りの近づいた九月初旬になっても相変わらず30℃を越す真夏日を重ね、「吹き出しのような雲」が盛んに湧き出し、仲秋とは思えない天気が続いていた。こうした句が九月句会に出てくるのもむべなるかなとも思った。
 漫画の登場人物のセリフを雲形の囲みに入れたのが「吹き出し」。誰が考え出したものか、愉快な発明である。真っ青な夏空に浮かぶ綿雲(積雲)や入道雲(積乱雲)を「まるで吹き出しのようだ」と言ったところが何とも面白い。
 さてその巨大な吹き出しに、あなたはどんなセリフを置くか。「サア、サア、サアサア・・・」 夏雲はむくむくと膨れ上がりつつ、答を迫る。
(水 20.10.20.)

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