水吸ふて厄日の砥石深き色    嵐田 双歩

水吸ふて厄日の砥石深き色    嵐田 双歩

『合評会から』

てる夫 厄日でいろいろな道具を手入れする句が多く出ています。その中でも、この「砥石」が「水吸ふて」がいいなと思っていただきました。
迷哲 鎌を研いだり、風よけを作ったり・・・厄日はそういう日なのだなあと思いました。よく厄日を捉えているなと思いました。
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 「厄日」は「二百十日」。風水害により農業や生活に大きな災厄がもたらされる時期であり、災厄に対し備えをすることや、神仏にその安穏を祈ることを本意とする季語である。鎌や鍬をとりあげたり、大工仕事をとりあげる句が多かった中で、この句は「厄日」に対し道具ではなく「砥石」を配している。読者は当然ながら砥石で何を研ぐのだろうかと考えさせられる。さらに「水吸ふて」、「深き色」などの措辞は、水害のイメージや、その影響の重さを想起させる。周到に組み立てられたミステリーを読むような、味わいのある句である。
 地球環境の変化によるものか、年を追って風水害がひどくなりつつある。厄日の少しでも平穏であることを祈らざるを得ない。
(可 20.09.25.)

この記事へのコメント

  • 双歩

    過分な読みをしていただき、ありがとうございます。たまたま家の包丁をまとめて研いだので、季語をつけみました。褒めていただき、包丁も甦って大満足です(笑)。
    2020年09月26日 11:23