串団子二と三に分け居待月    野田 冷峰

串団子二と三に分け居待月    野田 冷峰

『季のことば』

 居待月とは仲秋の名月(十五夜)の三日後、旧暦八月十八日の月のことである。十五夜の次の夜は「十六夜」。十五夜は日没後間もなく上って来るが、それより三十分近く遅く、ためらうように上ってくるので「いざよい」と呼ばれる。次の晩はさらに三十分ほど遅れて出て来るので「立って待っている」立待月。その翌日が十八夜の「居待月」。十五夜に比べると1時間半も遅いから、立って待つには草臥れるというわけだ、
 令和2年は旧暦と現代の暦とのずれが大きく、仲秋の名月がなんと十月一日にずれ込んだ。従って居待月は十月四日ということになる。ということからすると、この句は一月早い居待月を見ての詠かも知れない。兎に角居待月の出るのは七時の頃合いで、あたりはもう真っ暗、筆者などはだいぶ出来上がっている。
 この句は居待月の情感を実によく捉えており、選句表で見た時に思わず「うまいなあ」と唸った。後から作者名が知らされて、いかにも愛妻家の句らしいなあと感じ入った。生前の愛妻と居待月を愛でつつ月見団子を分け合った思い出の句であろう。一串五個の団子を二個と三個に分け合って食べたのだろうか。いや、これは二人ともまだ若い頃のことで、「あなた三本、私二本」ということだったのであろうか。
(水 20.09.24.)

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