大厄日小川大河に様変わり    池内 的中

大厄日小川大河に様変わり    池内 的中

『季のことば』

 きょう日の「厄日」といえば、自身にちょっと不運な事故が起きたりミスを連発したりした時に発する常套句――「ああ、きょうは厄日だ」。季語の上では時候の項目。二百十日の台風は農家にとって大厄だ。昔から台風の襲来は、一年の稲作の努力を無にしかねない鬼門だからこの頃が厄日となったという。近年はことに風水害が多い。一昨年の広島地滑り、去年の千曲川氾濫などいくつも指を折ることができる。風害だって房総大被害は去年の事である。
 農家ならぬ筆者ら俳句仲間。今月の番町喜楽会の兼題「厄日」はもっぱら二百十日の天文を詠んだ句が多かった。この句も台風禍の光景を詠んでいる。作者の住む身近に小川が流れているのだろうか。突然のゲリラ豪雨が、ほんの数キロ四方の地域に襲い掛かる気象がいま日常茶飯となっている。あれよと言う間に小川がまるで大きな川になったようだというのは、よくあることだ。しかしいくら何でも「大河」はなかろうという声も出そうだが、そこが俳味だと思う。あえて大河と大げさに言ったのがこの句のミソだ。平易に「厄日」を詠んで、そりゃそうだと納得する。
(葉 20.09.23)

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