野の花のなかの碑流れ星     広上 正市

野の花のなかの碑流れ星     広上 正市

『季のことば』

 花の咲き乱れる野中に文字の刻まれた碑(いしぶみ)があり、夜空に星が流れて行く、と言う句である。作者は以前からこの碑があることを知っていて、気になってはいたのだろう。散歩のついでに碑面を覗き込んだこともあった。何らかの文字が刻まれていたのだが、大半が摩滅していて意味を読み取ることは不可能である。
 句会の兼題は「夜這(よばい)星(ぼし)」だった。珍しいし、難しい季語である。そして「夜這星」は季語「流れ星」の傍題なのだ。このような季語には大いに挑戦すべきだし、季語というものを考えるきっかけにもなる。しかし作者は「流れ星」と詠んだ。「いしぶみ」つまり文字の刻まれた石碑に相応しいのは? と考えた末の「流れ星」だったのだろう。
 私はこの句会、夜這星を詠んだ最高点句にも一票を投じ、「夜這星の歴史は人類の歴史でもある」と感想を記したが、掲句については何も書いていない。そこで流れ星と人間の歴史を改めて考えてみた。夜這星は人間の本能に関わっている。一方、流れ星には人間の文化が絡んでいそうだ。「いしぶみ」の語感から生まれた連想でもある。
(恂 20.09.03.)

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