霍乱や母が常備の正露丸 野田 冷峰
『合評会から』(日経俳句会)
鷹洋 万能薬の正露丸。あの嫌な匂いを嗅ぐと嘔吐、腹痛が収まる気がするから不思議。昔は征露丸だったが敗戦日本の悲しさ。改名しても薬効があればまあいっか。
反平 そういえば、なんでもかんでも正露丸だった。まだまだ健在のようだが。
二堂 家には富山の薬箱があって、腹を壊すと母は正露丸を出してきました。
定利 母の代から使ってる正露丸を、慌てて引出しに探す景がうかぶ。
而云 正露丸があって「霍乱」が成立した。
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「霍乱(かくらん)」とは熱中症はじめ胃炎、腸チフス、赤痢など夏場に多い疾病をひっくるめて言う病名。日露戦争(明治37,38年)の従軍兵士の為に、そうした疾患の予防・治療薬として陸軍衛生材料廠が開発したのがこの丸薬。「ロシアを征伐する」という意味を込めて「征露丸」と命名した。電信柱や枕木の防腐剤クレオソート油と混同されることがあるが、防腐剤の方はコールタールを蒸留して作り、正露丸は木材を乾留して作る木酢液、木クレオソートが原料。日露戦争どころか第二次大戦中も使われ、戦後75年の今でも愛用者が少なくない。昔は「なんでもかんでも正露丸」というオバアチャンが多かったと言うが、今でも「うがい薬がコロナに効く」などというナイーブな知事さんも居る。
(水 20.08.12.)
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