涼やかに岡虎の尾と平茶碗 久保 道子
『季のことば』
「岡虎の尾」とは? と首を捻り、辞書を開く。「サクラソウ科の多年草。高さ40~80㌢、夏に白色の五弁花を湾曲した総花序を茎頂につける」などとある。野草らしいが、もう少し知りたいと全七巻の「季寄せ―草木花」で調べてみても出ていない。では歳時記は、これにも出ていない。岡虎の尾は季語ではないのだな、と独断する。
俳句を始めて半世紀余り。植物についてはそれなりに心得ているつもりだが、それらはほとんど「季語」に限られていたのだ、とこれまた独断。「草花のおおよそは季語と思いがちだが、そうとは限らない」などと書き、当欄の編集者・大澤水牛氏に送稿したら、「 “虎の尾”が季語ですよ」との指摘。いやぁ、参った、参った。
日本大歳時記で調べ直すと「虎の尾」しか項目がない。ならば、とネットで検索したら、虎の尾には「岡虎の尾」と「沼虎の尾」があるという。岡虎の尾の写真もあり、太そうな花穂に五弁の白い花がびっしりと咲き、先は垂れ下がっていた。この花に平茶碗を配した様子を思い浮かべる――。ようやく端正な茶室が浮かび上がって来た。
(恂 20.08.02.)
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