エコバッグ土用の丑を持ち帰る 杉山 三薬
『季のことば』
季語は「土用」で、「元来は春夏秋冬それぞれの終わりの18日間を言うが、今日ではもっぱら夏の土用だけが話題にされている」(水牛歳時記)。立秋前の新暦7月19日ごろからで、一年で最も暑い時期にあたる。土用の丑の日に鰻を食べる風習があるが、江戸時代の天才学者・平賀源内が広めたという説が伝わる。夏の売り上げ減に悩む鰻屋に頼まれ、「本日丑の日」の看板を掲げさせ、鰻を食べると元気になると説くと飛ぶように売れたというもので、土用鰻という季語もある。
例年なら丑の日前後は鰻屋に行列ができるが、掲句はコロナ禍で様相が違う店先を詠む。老舗も客足が減り、テイクアウトを始めた店も多い。作者も店内を避け、持ち帰りを選んでいる。しかも7月からのレジ袋有料化に対応し、エコバッグの用意も怠りない。今の世相を二重に詠み込んだ巧みな時事句といえる。
今年の丑の日は暦の巡り合わせで、7月21日と8月2日の2回ある。鰻屋はもちろんスーパーも、冷え込んだ消費を喚起しようと宣伝に努めている。稚魚のシラス漁獲がやや回復し、値段も昨年より安くなっているという。読者の皆さんは、どんな土用の丑を食されるのであろうか?
(迷 20.07.22.)
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