窓越しにアカシヤの花テレワーク  工藤静舟

窓越しにアカシヤの花テレワーク  工藤静舟

『この一句』

 コロナウイルスの影響で在宅勤務をしている様子を詠んだ時事句である。
 最近流行りのテレワークなるものがどんなものなのかあまり確かな実感がなかったが、五月の初めに、中国に赴任していた息子が帰国し、PCR検査の後自宅待機をさせろと我が家に飛び込んできた。息子の居る部屋からはテレビ会議らしき声がもれ聞こえてくる。上司と話をしているのか、ときおり敬語なども混じる。「へぇー、会社じゃあんな口の利き方するんだ」とこちらが驚く。
 なるほど、テレワークとは外の仕事を内に持ち込むことかと理解する。これじゃ、家族に邪魔されない場所がなくて、苦労しているお父さんもさぞかし多いことだろう。内と外は別々が良し。途中に飲み屋があればなお良し。在宅勤務など、精神衛生上は決してよろしくないと思う。
 この句は、二階の部屋でテレワークをしている最中に、窓の外のアカシヤの花がふと目に止まったという光景か。しばらくは、仕事そっちのけで花に見惚れて癒されている。会議も仕事もどうでも良い、という気分もほのかに感じられる。「いつまでこんなことやるんだろう?」という呟きも聞こえて来そうだ。
 それにしてもこの作者がテレワークなんかするんだろうか?
(可 20.06.10.)

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