春雨の傘の取り持つ出会かな   田中 白山

春雨の傘の取り持つ出会かな   田中 白山

『この一句』

 「なんとまあ、瑞々しい」というのが第一印象でした。そして春雨の出会いの記憶を句にできる羨ましさが段々募ってきました。句会では、だれも票を入れませんでした。嫉妬心かもしれません。しかし作者がわかって、「八十路の青春」はなんとも素晴らしいと申し上げたい。
 最近、昔の出来事などを思うことが多くなりました。五年生の第二学期に編入した都内の小学校で、気になる女の子がいました。出来る子で、姓名をちゃんと思い出せます。高校時代には手紙をやりとりした同級生が居ました。高校卒業でお付き合いは途切れてしまいましたが、名字が変わったことを知っています。
 わが青春を語ることは恥ずかしいかぎりですが、大学時代は四年間、学費稼ぎの家庭教師に明けくれ、クラブ活動の仲間と寄った高田馬場のスタンドバーで、お姉さんに言い寄られそうになったことがあるくらい。五味川純平の「人間の条件」を貪り読んで、仲代達矢・新珠三千代の主役にほれ込んだりしましたが、自分がロマンの主役になることはありませんでした。
 ですから八十歳代半ばの年齢で、素敵なロマンを胸に秘めている作者はやはり羨ましいあ。
(て 20.05.28.)

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