せせらぎへ卯の花こぼる城下町  前島 幻水

せせらぎへ卯の花こぼる城下町   前島 幻水

『合評会から』

迷哲 津和野あたりをイメージしました。「こぼる」が絶妙で静かに散る卯の花が見えてきます。
水兎 地方の旧街道沿いの小流れに、静かに卯の花が散っている。長く残って欲しい風景です。
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 こういう句を読むとすぐに、これはどこを詠んだのだろうと思ってしまう。せせらぎのある城下町。小さな川であればどこでも良さそうだが、「せせらぎ」は浅瀬の川音を想起させる言葉で、川音が聞こえるような静かな場所でないといけない。迷哲さんは津和野をイメージし、水兎さんは旧街道沿いの城下町をイメージしている。いずれにせよ、少し草深い小さな城下町を想像させる。
 この句はやはり「こぼる」を使ったところがお手柄だという気がする。意味からすれば「落ちる」でも良いのだろうが、それでは句として収まりが悪い。「こぼる」は、ふわっとこぼれる静かな落ち方で、語感がとても柔らかである。また、「せせらぎ」の動と、「こぼる」の静の組合せが、この句を趣きのあるものにしている。
(可 20.05.25.) 

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