ふわふわの赤い兵児帯初浴衣 星川 水兎
『季のことば』
初浴衣とは幼い子供が初めて着る浴衣のこと。夏の季語である浴衣の傍題として、藍浴衣や宿浴衣などと並ぶ。子供が四、五歳になり、しっかり外歩きもできるようになると、浴衣を作る。子供に似あう柄を選び、昔は母や祖母が縫ってくれたものだ。子供は成長が速いので、数年は着られるように大きめに作り、肩揚げ、腰揚げをして調整する。
この句は初めて浴衣を着た女の子の赤い帯に目を向ける。兵児帯(へこおび)は元々薩摩の若い男性(兵児)が締めていた縮緬地の柔らかい帯。体に負担がなく締めやすいため、明治以降に子供の浴衣帯としても広まったという。女の子の兵児帯は赤い縮緬に絞りを入れたものが多く、背中で蝶結びやリボン結びにする。
「ふわふわの」という擬態語が効果的で、背中で揺れる帯と共に、初浴衣の子供の喜びや可愛らしさも浮かんでくる。作者自身の体験であろうか。選句表には「裾下げは母の喜び浴衣の子」(木葉)の句もあった。初浴衣を仕立ててもらう喜び、揚げを下ろして成長を実感する喜び、浴衣には親子の細やかな情愛が縫い込められている。
(迷 20.05.24.)
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