ウィルスの寄せ来る気配春の闇 斉山 満智
『この一句』
新型コロナウィルスで生活の在り様が大きく変わった。家に帰るなり「手を洗え」「嗽を忘れるな」「洋服には除菌スプレーを」…。テレビも新聞も「昨日は感染者が何人、死者が何人」などという報道に明け暮れている。そういう世の中だけに、春の闇にウィルスが寄せ来る気配を感じ、怯える心はよく分かる。
コロナウィルスは本当に怖い。こんなに始末の悪い疫病はない。感染の恐れが強いので、家族でも死に目に会えないのだから。「満足な葬儀もできず…」という話も伝わっている。目下のところ、治療薬もワクチンもない。そんなことを思いつつ歩いている夜更け、生暖かい風にでも吹かれれば、身の毛もよだつかもしれない。
「春は朧」などと優雅に句をひねっている中はいい。だが、朧が消え、闇が深まり、魑魅魍魎が動き出すと、とてつもない惨禍を引き起こす。コロナウィルスもそのひとつ。それにつけても、1世帯にマスクを2枚づつ配って何百億円とかいう愚行にも、うすら寒い想いがする。「アベノマスク」ならぬ「阿呆のミクス」、くわばらくわばら。
(光 20.05.08.)
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