菜の花やなべて思ひ出ほろ苦く 今泉 而云
『合評会から』(日経俳句会)
双歩 旬を感じる菜の花は、確かにちょっぴり苦い。酒をちびちびやりながら何を思い出しているのでしょうか。
迷哲 菜の花の辛し和えを肴に一杯。春の宵は、ほろ苦い思い出、
操 思い出はちょっと切なく、なべてほろ苦いもの。共感です。
三代 菜の花のおひたしのほろ苦さをうまくダブらせている。
正市 季語と主題との違和感がかえって新鮮だ。
而云(作者) 佳句、好句の揃った中、「菜の花や~」の高点に恥ずかしさを感じております。
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この句の眼目は「なべて」と「ほろ」だと思う。「思い出というものは概ねちょっと苦い」ということを絶妙な言葉を遣い、淡く表現している。春の風に揺れながら咲き揃う菜の花もまた、輪郭が曖昧で印象は淡い。読者をくすぐる内容と、季語に相応しい措辞で春愁の世界へ誘う。
(双 20.04.13.)
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