老いてなほ器量良し追ふ猫の恋 石丸 雅博
『この一句』
猫にもさまざまな風貌がある。愛嬌がある、気の弱そうな、強そうな、睨まれると怖そうな・・・、という具合だ。確かに器量よしもいて、恋の季節の彼らを見ると、「もてるだろうなぁ」と思う雌猫もいる。句はそして「老いてなほ」と詠む。ウチの猫(牡)のことだけではなく、作者をはじめ「人間の男も」と思わすところに句の面白さがある。
俳句会はおおよそ、メンバーの年齢的な代謝が起こりにくい団体である。同年齢の気の合う人々が集まって会がスタートするケースが大半だろう。新入りが登場しても、会員と同年配が多く、会全体が老齢化していく。掲句を見て「オレのことか」とぎくりとし、周囲を見回して、みんな歳を取ってきたからなぁ、と眺め渡していくらか安心する。
男性が器量よしの女性に魅力を感じるのは若い時だけではない。いや、年齢を重ねるごとに高根の花への憧れが高まっていくのではないだろうか。「なぁ、そうだろう」と仲間に相槌を求めたら、「そうかな。猫も年取ればこの時期、夜は出歩かないよ」との答え。そんな返事を期待したのではなかったのだけれど。
(恂 20.04.10.)
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