木瓜の花あと三年は免許あり   杉山 三薬

木瓜の花あと三年は免許あり   杉山 三薬

『この一句』

 年齢を云々してはいないが、「あと三年は」と述べたことによって、かなりの高齢者であることが分かる。若い者なら免許更新期まで三年ということに何の感慨も抱かないだろう。しかし、高齢者にとっては「あと三年」はこの上なく貴重であり、喜びである。
 田舎は無論のこと、大都市の郊外住宅地でも、近ごろはバスの運転本数が減っている。自家用車が増えてバス利用者が減り、公営私営を問わず経営上の問題から運転本数を間引く。するとますます乗客が減り、それがさらなる本数減を招く悪循環に陥り、ついには路線廃止となる。そうなるとたとえ年寄り家庭でも自家用車に頼らざるを得ない。身体機能が衰え、咄嗟の判断に一拍遅れということが目立つようになり、周りから「もういい加減に運転は止めたら」と言われ、自分でもそう思いながら、止められない。
 そうした状況を詠んでいるのに、この句にはじめじめと落ち込む感じが無い。木瓜の花を取り合わせて老耄をうたいながら、あっけらかんとして「あと三年あるぜ」と強がりを言う元気の良さが嬉しい。
(水 20.03.27.)

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