春の日や再雇用とて白髪染め   谷川 水馬

春の日や再雇用とて白髪染め   谷川 水馬

『この一句』

 再雇用とは「定年後再雇用制度」のこと。企業の大半は60歳定年制を採用しているが、厚生年金の支給開始年齢引き上げに伴い、65歳までの継続雇用が法律で義務付けられた。定年を延長した企業もあるが、多くは1年契約の再雇用制度で対応している。
 作者も再雇用で仕事を続けることが決まったのであろう。新年度からの出社に備えて白髪を染め、気持ちを新たにしている。助詞の「とて」が絶妙である。直接的には白髪染めの原因・理由を表しているが、何やら一歩身を引いて、自分を面白がっている気配が漂う。
 川柳は仕事をテーマにした句をたくさん見かけるが、仕事の俳句は農業を除くと意外に少ない。川柳が世の中の変化をいち早く捉えて笑い飛ばすのに対し、俳句は季語や字数の縛りがあり変化に遅れがちだ。川柳を進取とすれば、俳句は守旧といえる。掲句は、再雇用という仕事の「いま」を捉え、白髪染めする自分をちょっと茶化して、笑いを誘っている。長閑な春の日にぴったりの時季の句であり、仕事の句である。
(迷 20.03.19.)

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