ウイルスが巨船を止める春寒し  前島 幻水

ウイルスが巨船を止める春寒し  前島 幻水

『この一句』

 目に見えないどころか顕微鏡でも見えない極微小のウイルスが巨船を立往生させてしまった。俳句仲間の一人が横浜港に止め置かれた豪華客船ダイヤモンドプリンセス号に乗船していたことが明らかになって、一層身近な事件になった。とにかく後世、平成23年と言えば「東日本大震災」、令和2年と言えば「新型コロナウイルス」となることは間違い無い。
 ダイヤモンドプリンセスという豪華客船は11万6千トン、全長290メートル、全幅37.5メートル、水面上の高さ54メートル、客室1337室というのだから、まさに海に浮かぶ宮殿である。それを1ミリの10万分の1のコロナウイルスが止めてしまったのである。
 この句は「ウイルスが巨船を止める」と、事実関係だけをあっさりと述べている。それでいてこの大騒動の全てを言い果せている。新型ウイルスという、正体もよく分からない病原体。いつ終息するとも分からない。今年の春は温度計の目盛が高くなる日が多いのに、「春寒し」という季語を用いて背筋がぞくっとする気分を伝えている。
(水 20.03.12.)

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