蕗の薹みどりに光る道の駅    久保田 操

蕗の薹みどりに光る道の駅    久保田 操

『この一句』

 この一句の評価のポイントは、中七の「みどりに光る」にある。上五の「蕗の薹」とは軽く切れ、下五の「道の駅」に続くと読んだのだが、「蕗の薹」が「光る」ようにも取れるからだ。そこで上五を「楤の芽」にして切れの「や」を入れ、「楤の芽や緑の光る道の駅」のようにすれば、誤解される懸念はなく、納得されやすいだろう。
 いずれにせよ、目に浮かんだのは週末の道の駅。店頭の春野菜を覗き込み、籠に入れていく人の群れである。菜の花に三つ葉、独活、芥子菜、ブロッコリー。アスパラガスや筍が出ているかもしれない。場所によっては蕨やゼンマイなど山菜の束も。春を迎えて芽吹き、生長し、滋養たっぷりの野菜が光り輝いている。
 蕗の薹も、道の駅のものとなれば色鮮やかで香高く、すっと手が出てしまう。「まず天婦羅にし、余りが出れば蕗味噌に。いや、二パック買おう。大した金額ではないし、都会のスーパーに比べれば格安」などと素早く計算して…。海に近い道の駅ならば、白子や鯵、烏賊あたりが手に入るかも。道の駅は、超新鮮な食材の宝庫なのだ。
(光 20.03.01.)

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