アマゾンで買いし一キロ蕗の薹 高橋ヲブラダ

アマゾンで買いし一キロ蕗の薹 高橋ヲブラダ

『この一句』

 蕗の薹の兼題句の中で、一番「旬」を感じた句である。大半の句が、蕗の薹の色や形を詠んだり、野原や土中から顔を出す様子を描写するのに対し、この句はネット通販のアマゾンを登場させて意表を突く。蕗の薹は八百屋やスーパーで買うものと思っていたが、旬の食材でさえネットで買う時代になっていると知り、軽い驚きを覚えた。
 日本の消費は、ネット通販の普及で大きく変わった。衣料や家電、生活雑貨、酒類、書籍などあらゆる物が、スマホのクリック一つで買える。消費者には大変便利だ。百貨店やスーパーの業績が落ち込み、書店の廃業が相次ぐのも、ネット通販に客を奪われた影響とされる。「二千円以上は送料無料」を武器に、トップを走るアマゾンはその象徴といえる。
 句会では、一キロの蕗の薹をどうやって食べたのか話題となった。アマゾンでは飛騨産のものが五千五百円で出ている。家族が多ければ食べきれない量ではないが、「蕗味噌にしたのでしょう」という見方に落ち着いた。今が旬の蕗の薹を材料に、消費の「いま」が見えてきた。
(迷 20.02.28.)

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