遮断機に止められ出会ふすみれ草 塩田命水
『この一句』
日本の山野に自生する菫(すみれ)は大昔から人々に愛され、「万葉集」に歌われ、芭蕉の「山路来て何やらゆかしすみれ草」を始め俳句にも数々詠まれている。
小さくてか弱い野草と思われがちだが、なかなかしぶといところがある。花も葉も小指の先くらいのものだが、がっちりと太い根を張り、踏んづけられても平気である。花の散った後5ミリほどの舟型の莢が付き、実るとパチンとはじけて、小っちゃな丸いタネを遠くまで飛ばす。測ったことはないが一メートル近く飛ぶのではないか。それが雨風に吹き流され、都合の良い処に納まったタネは芽生え、そこで大きくなり・・という具合で子孫を拡げて行く。園芸愛好家がいろいろな菫を鉢植えにして楽しんでいるが、それがタネを飛ばして、街中でも道路際の舗装道路の割れ目などに生えて花咲かせている。
一瞬間に合わず、カンカンカンと警報器が鳴って遮断機が下りた。やれやれと、足下に目を遣ったら、なんと線路と道路の継ぎ目の所に菫が咲いている。足止めを食わなかったらお前さんとは出合はなかったなあとつぶやいている。
(水 20.02.20.)
この記事へのコメント