忖度も偽りもなく菫咲く 中沢 豆乳
『この一句』
2017年2月に表面化した「森友学園問題」、続いて起こった「加計学園問題」。いずれも安倍晋三首相の意向を「忖度した」財務省や文部科学省などの官僚が、首相及び首相夫人の“お友だち”の希望を叶える形で、不公正な取り扱いを行ったとして、国会で追及され、国民は政治家と高級官僚に対して大いなる不信感を抱いた。追及が激しくなり隠し切れなくなると、「廃棄した」はずの資料が出て来るといった虚偽行為も次々に重なった。
この「忖度と偽り」事件はいつの間にか有耶無耶になり、安倍さんは日本政界史上最長不倒の総理大臣として、今度は「桜を見る会」に税金を使って自らの後援者らを招待した疑惑にさらされながら、相変わらず頑張っていらっしゃる。
この句はそうした現実をぐさりと抉った。しかも、その役を可憐な菫に振ったところがすごい。純粋無垢に咲いた菫をうたうことによって、「おべっかの忖度と虚偽にまみれた社会」を浮かび上がらせた。
あと5年もすると解説抜きでは理解出来なくなる恐れのある句ではあるが、この取り合わせはどきっとする。
(水 20.02.13.)
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