月冴えて語り出したる影法師 中村 迷哲
『合評会から』(日経俳句会)
豆乳 「語り出したる影法師」という言葉が面白くて採りました。若い人が歩いていて急に語り出したのかな。
青水 解釈を読者に任せすぎかなと思った。
阿猿 誰の影法師なのか、何を語っているのか。よく分からないが、なんだか気になった句。
雅史 影法師が語り出しそうに思えるほど冴えて、鮮明なのでしょうか。
明生 影法師は自分自身に語りかけているのか。どこか謎めいた感じ。
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1960年、学生演劇に没入していた頃、文学座が『ゴドーを待ちながら』(サミュエル・ベケット)という「不条理演劇の傑作」を上演、衝撃を受けた。舞台装置は立木が一本だけで、二人の浮浪者がゴドーなる人物を待っている。ゴドーが誰なのか作者は語らず、結局、現れないまま芝居は終り、観客は狐につままれた気持。私もその一人だったのだが、何故かこの時、「ああ独文でなく仏文に行くべきだった」と思ったものである。そんなことを思い出させる句である。
(水 20.01.28.)
この記事へのコメント
迷哲
実体験をもとにした句ですが、その奇妙な感覚を皆さん読み取って頂き、感謝しています。