女正月馴染みの店へ二人して 井上庄一郎
『この一句』
女正月(おんなしょうがつ)は、小正月の別称で1月15日を中心に祝われる正月をいう。元日の大正月を男正月と言うのに対応したもの。年末年始に多忙だった女性が15日頃にやっと手が空いて、年始回りに出かけたり、食べ物を持ち寄って女性だけで慰労の集まりをする。
掲句は、年末年始に子供や孫の世話で忙しかった妻を思いやり、馴染みの店に連れ立って出かける老夫婦と読み解き、一票を投じた。句会では「スイーツも酒も持ち寄り女正月」(徳永木葉)という別の句に票が集中した。スイーツという現代的な言葉と、古い行事である女正月を組み合わせ、伸びやかに生きる女性を活写した句で、宴の様子まで浮かんでくる。
スイーツの句が女正月の本義を踏まえつつ、現代の世相を巧みに詠み込んだ佳句であることに異論はないが、労わり合いながら馴染みの店に出かける老夫婦の姿も心に残る。女性活躍社会と超高齢化社会という、現代日本の縮図が女正月に二重写しになっている。
(迷 20.01.26.)
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