初雪や子の恋人の来ると言ふ   田中 白山

初雪や子の恋人の来ると言ふ   田中 白山

『季のことば』

 初雪はその冬に初めて降る雪のこと。古来、雪は月、花と同様に賞美され、特に初雪は縁起の良いもの、心弾むものとして歌や句に詠まれた。「初雪は盆にもるべき詠(ながめ)哉 其角」や「初雪や水仙の葉の撓むまで 芭蕉」が歳時記に載る。
 掲句も子供が恋人を連れてくることを喜び、そわそわして迎える親の気持ちが、初雪の季語にうまく合っている。家族のあたふたぶりも想像され、微笑ましく心がふんわり温かくなってくる句だ。
 句会では雪国生まれの人から、初雪は寒く長い冬の到来を告げるもので、違和感があるとの指摘があった。確かに冬に向かう覚悟を迫る側面もあり、雪国に住んだ一茶には「初雪をいまいましいと夕(ゆうべ)哉」の句もある。
 ただ日本の風雅の伝統から見ると、初雪はやはり心弾むものであり、喜びを詠んだ明るい句が多い。家族にとっての〝大事件〟をユーモアに包んで詠んだこの句に、初雪に対する思いは別にして雪国の人も共感してもらえるのではないだろうか。
(迷 19.12.20.)

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