納税のお礼にどんと切干来    谷川 水馬

納税のお礼にどんと切干来    谷川 水馬

『この一句』

 「ふるさと納税制度」を詠んだ句である。総務省のホームページに、「今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた『ふるさと』に、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのではないか」という問題提起から始まったとある。実態がこの文言と大きくかけ離れているのは周知の通りである。筆者も海産物のお礼目当てに寄付したことがある。島根、高知、鹿児島の市町村で、「自分を育んでくれた」大阪ではなかった。送られて来た干物や鰻は美味しく頂戴したが、なんだか面倒くさくて一年でやめた。この句は切干の返礼を目当てに寄付したという話である。ネットで調べてみると、北海道や宮崎などのいくつかの市町村で、切干の返礼品が並んでいた、
 この句が作者の実体験にもとづくものなのかどうかよくわからないが、「切干」という兼題に、「ふるさと納税」に思い至るというのは極めてユニーク。いつも類句類想を排して、出来るだけ新しい素材を詠もうと努力されているこの作者らしい。現代の世相を切りとったいい句だと思う。おまけに「どんと」の三文字がいい味を出していて、読む者をくすっと笑わせる。
(可 19.11.23.)

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