湯冷めして二十数へしころ思ふ   塩田 命水

湯冷めして二十数へしころ思ふ   塩田 命水

『季のことば』

 風呂上がりで身体がほてっているものだから羽織るものもいい加減に、気になるテレビ番組を見ていたらクシャミが出た。これはいけない、湯冷めしてしまったようだ。風邪を引かなければいいが・・。「予防のため」などとつぶやきながら一本熱燗をつけた。
 猪口でなく湯呑についでぐいとひと吞み。熱燗の湯気に噎せて、こんこん咳をしながら、「やっぱり引いたかな」なんて思っていたら、大昔を思い出した。四、五歳の頃、風呂が嫌いというより、じっと入っているのが嫌いで、すぐに出ようとする。母親が「もう少し温まらなくてはだめよ」と肩を抑えつける。それを撥ねのけて立ち上がろうとすると、もっと強い力で抑え付けられ、「さあ、二十数えましょ」と言われる。一生懸命の早口で、イチ、ニイ、サン、シイ・・と数えたものだった。
 風呂で温まったら冷えないうちに寝るのが鉄則だった時代の冬の季語「湯冷め」。暖房の行き届いた最近はすっかり忘れられたかのようだが、油断すると昔を思い出すことになる。
(水 19.11.18.)

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