秋の蝶ベンチに白き杖二本    横井 定利

秋の蝶ベンチに白き杖二本    横井 定利

『この一句』

 言うまでもないが、白杖は視覚障碍者の用いる杖である。ベンチに白い杖が二本。すなわち目の悪いお二人がベンチに座っているのだ。介助者がいるのかどうか。一人で外へ出られる方が二人、偶然に公園で出会って、というケースも考えられよう。ともかく二人の脇には一本ずつの白杖がある、という風景が詠まれている。
 そこに秋の蝶がひらひらと飛んできた。夏とは違って飛び方に力強さがない。ベンチのお二人はもちろん蝶に気が付かない。ここが一句の眼目である。蝶があたかも人に慕い寄ってくる、というようなことがある。この時も、二人の目の前に飛んできていて、髪のあたりに止まろうとしているのだが・・・。
 傍観者、つまり作者は「ほら、蝶が・・・」と言おうとして口を噤んだ。声を掛けてはいけない、というほどのことはない。注意するほどのことでもない。それがどうしたの? それもまた俳句なのだ、と私は思う。
(恂19.11.04.)

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