異国語の飛び交ふ村の吊し柿   加藤 明生

異国語の飛び交ふ村の吊し柿   加藤 明生

『季のことば』

 柿は縄文時代から日本人に親しまれた果物で、関連する季語も多い。大事な食糧源だったため、甘柿、渋柿、熟柿、干柿、吊し柿、富有柿、次郎柿といった柿の種類や味が季語になり、さらに柿若葉、柿の花、柿紅葉、柿落葉など多彩だ。柿の木の変化と実の生り具合を、大事に見つめてきた日本人の暮しが生んだ季語といえる。
 掲句は「異国語の飛び交ふ」現代の農村を描く。技能実習生の名目で、農漁業や工場の現場に外国人を受け入れるようになって久しい。担い手不足に悩む農家はこの制度に頼り、全国で2万5千人の外国人が農業に従事しているという。待遇面など問題点もあるが、村によっては、技能実習生なしには経営が成り立たないのが現実だ。
 「飛び交ふ村」とう措辞で、ひとり二人ではない外国人が働いている様子が分かる。そこに吊し柿という古来の季語を配する。柿すだれの下がる長閑な村の情景と、外国人に頼らざるを得ない現実との落差が心に残る。句会で高点を得たのもうなずける。
(迷 19.10.24.)

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