どんぐりの落ちて胸まで跳ね返り 金田 青水


どんぐりの落ちて胸まで跳ね返り 金田 青水

『この一句』

 筆者は合評会で「何という句でもないが」と前置きしつつ、この句を選んだ訳を述べた。一読してまず思い起こしたのが、碧梧桐の名句とされる「赤い椿白い椿と落ちにけり」であり、「滝の上に水現れて落ちにけり」の後藤比奈夫の句である。先人二人の句も、何ともないと言えば何ともない状況を詠んだだけだが、写実でありながら自然の摂理の深遠さが表されており、胸底に落ちて心の琴線に触れる。
 どんぐりの句は「引力、重力の法則まで感じさせる」とまで筆者が評したのを、句会の方々は言い過ぎだと思われただろう。この句を採らなかった人の意見は「落ちて跳ねて胸まで来るなんてあるのか」「下は土ではなく石畳かコンクリートなんだろうが、それにしてもちょっとね」という声に集約される。作者も「その点は…」と口を濁し、やや非現実的な現象なのかもしれない。しかし、これはこれで「ありうるかもしれない」胸に落ちる写実句である、と思うのである。
(葉 19.10.21.)

この記事へのコメント

  • 迷哲

    私は胸まで跳ね返る場面を想像できずに、採りませんでした。しかし、あり得ないことを目撃した驚きが、この句にはこもっているゆに思います。理屈で読むのではなく、作者の感動に素直に感応することが俳句鑑賞の第一歩ですね。
    2019年10月21日 13:31